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高等教育ライブラリ

「高等教育ライブラリ」の刊行について――

 東北大学高等教育開発推進センターは高等教育の研究開発、全学教育の円滑な実施、学生支援の中核的な役割を担う組織として平成16年10月に設置された。また、本センターは平成22年3月、東北地域を中心に全国的利用を目指した「国際連携を活用した大学教育力開発の支援拠点」として、文部科学省が新たに創設した「教育関係共同利用拠点」の認定を受けた。この拠点は大学教員・職員の能力向上を目指したFD・SDの開発と実施を目的としている。

 本センターはその使命を果たすべく、平成21年度までに研究活動の成果を東北大学出版会から9冊の出版物として刊行し、広く社会に公開・発信してきた。それはセンターを構成する高等教育開発部・全学教育推進部・学生生活支援部の有機的連携による事業で、高大接続からキャリア支援に至る学生の修学・自己開発・進路選択のプロセスを一貫して支援する組織活動の成果である。これらの出版は高等教育を専門とする研究者のみならず、広く大学教員や高校関係者さらには大学教育に関心を持つ社会人一般にも受け入れられていると自負しているところである。

 そうした成果を基盤として、共同利用拠点認定を機に、活動成果のこれまでの社会発信事業をより一層組織的に行うべく、このたび研究活動の成果物をシリーズ化して、東北大学高等教育開発推進センター叢書「高等教育ライブラリ」の形で刊行することとした次第である。「高等教育ライブラリ」が従来にもまして、組織的な研究活動成果の社会発信として大学関係者はもとより広く社会全体に貢献できることを願っている。

平成23年1月吉日  木島明博(第3代センター長)

教育・学習過程の検証と大学教育改革

※「東北大学高等教育開発推進センター」は、2014年4月から「東北大学高度教養教育・学生支援機構」に名称が変更になりました。

【各巻内容紹介】

高等教育ライブラリ1
『教育・学習過程の検証と大学教育改革』
どのような教育がいかなる学習を惹起し、その成果へと結びつくのか。日本の大学では長らく等閑視されてきたこの問いは、18歳人口の減少やグローバル化という環境の変化の中で、近年鋭く問われるようになってきている。本書は、経験的なデータに基づいた研究の中から、この問題を考える上で手懸りとなり得る理論と実践を集約したものである。
高等教育ライブラリ2
『高大接続関係のパラダイム転換と再構築』
かつて高校と大学の教育は大学入試の一点で結ばれていたが,大学が大衆化した現在,高大接続は時間軸に沿って広がりを持つようになった。大学入試もかつての単なる選抜装置としての機能から,日本の教育を支える要の役割を担っている。高大接続関係が大きく転換しつつある現在,新たなパラダイムが胎動しつつある。一方,現場では限られた条件で最善を模索しなければならない。高大接続関係の再構築に向けて,今,教育に携わる当事者ができることは何か。本書は多様な実践事例とその検証を背景に新たな高大接続モデルを提示する試みである。
高等教育ライブラリ3
『東日本大震災と大学教育の使命』
東日本大震災は、科学技術のこれからのあり方、危機管理のあるべき姿、人間関係や地域社会の再構築など、将来目指すべき人間・社会・自然のかかわりをめぐる根本的な問いを私たちに投げかけた。大学はこうした事態を前に、どのような人材を養成すべきか。また、これからの大学教育は如何にあるべきであろうか。前半の高成田享(メディア)、吉岡斉(科学技術史)、野家啓一(科学哲学)の3氏によるそれぞれの専門分野からの議論を受けて、後半では東北地域各大学の復興支援活動の現況と今後の人材育成にもたらす展望を掲載。大震災後の大学教育の将来展望を探る待望の書である。
高等教育ライブラリ4
『高等学校学習指導要領vs大学入試』
高校教育を実質的に規定している要因とは何か。大学の入学基準はどのように担保されているのか。そして、学習指導要領,大学入試センター試験,個別試験の相互関係とは。大学全入時代と言われる現在,大学入試が激戦だった頃の常識はもはや通じない。学力試験は、教育を支える「要」なのか,それとも単なる「形式」に過ぎないのか。大学入試制度は慎重に改善すべきなのか,あるいは一気に変えるべきなのか。そして、大学と高校の“役割分担”は・・・。立場の異なる執筆者たちによる主張の交差から、日本の教育の近未来像を描く果敢な試み。
高等教育ライブラリ5
『植民地時代の文化と教育-朝鮮・台湾と日本-』
本書は、韓国植民地化から100年にあたる2010年に、東北大学高等教育開発推進センターによって企画・実施された国際シンポジウム「植民地時代の文化と教育」等の成果をまとめた論集である。アジアにおける過去の歴史的経験をみつめ、新たな関係構築の基礎とすることを目指し、日本・韓国・台湾の8名の研究者が最新の成果を寄稿している。第Ⅰ部では植民地時代の教育・演劇・文学をめぐる新たな側面を、第Ⅱ部では当該時期の帝国大学の持っていた諸機能を多面的に論じる。教育史、大学史そして比較文化の視点からの学際的な取り組み。
高等教育ライブラリ6
『大学入試と高校現場-進学指導の教育的意義-』
大学入学者選抜制度の改革が、その意図に反し結果的に「改悪」と受け止められてしまうのは何故なのか。その謎を解くカギを高校教育の現場に探す。多様な環境下にある現代の高校において、進学指導の「真の目的」は如何なるものなのか。そして大学入試はどのような機能を果たしているのか。大学・高校双方の視点から埋め込まれた文脈の掘り起こしを試み、その過程で見えてきた「受験は団体戦」ということばの意味を、人間形成への影響も視野に入れながら検討する。2012年5月18日開催の東北大学高等教育フォーラム「進路指導と受験生心理」をもとにしたレポートと考察。
高等教育ライブラリ7
『大学教員の能力―形成から開発へ―』
高等教育の構造的変動のもとで、伝統的専門職である大学教員の地位も変動にさらされている。こうした変動の中で大学教員はいかにそのスキルとキャリアを進化・発展させているのか。教育と研究の二項対立的な大学教員観を超え、専門性開発の視点から大学教員の多面的な能力とその発達に注目する。最新の調査結果から得られたデータをもとに、日本の大学教員研究における新たな展開を指し示すとともに、各大学における教員の人的資源開発政策の策定といった実践的課題にも応えうる意欲的著作。
高等教育ライブラリ8
『「書く力」を伸ばす―高大接続における取組みと課題―』
「書く力」とは何だろうか。それは高校教育や大学教育の中でどのように育てられているのか。育てられるべきなのか。高校の「国語」の時間では相当な時間数を「書くこと」に当てることになっているが、実現は難しい。むしろ、大学入試の小論文指導の中で「書く力」は鍛えられている。「読むこと」は「書くこと」の前提条件なのか。それとも両者はトレード・オフの関係なのか。大学入試で「書く力」はどこまで伸ばせるのか。変わりゆく大学教育で「書く力」の育成はどこまで可能なのか。「対話力」をキーワードに現実的に可能な解決策を探る。
高等教育ライブラリ9
『研究倫理の確立を目指して―国際動向と日本の課題―』
「研究における誠実性」はどう扱われるべきなのか? 責任ある学術研究のために不可欠な、倫理の確立と不正の防止・対応策。問題の整理と現場の実情をふまえ、大学における研究教育の「信頼性」の維持を多角的に問う試み。
アメリカ・イギリス・ドイツ・中国・オーストラリアの事例を手がかりに、我が国の今後のかたちを模索する。
高等教育ライブラリ10
『高大接続改革にどう向き合うか』
高等学校教育と大学入試の改革の中枢で、何が起こってきたのか? 高校教育、大学教育、そして大学入試を一体的にとらえて抜本的な改革を迫る「高大接続改革」のプランは、平成25年に突如現れ、中央教育審議会とその後継の会議の議論を巻き込みながら進んでいる。しかしながら、現在まで提案されている具体的方法論は、実現可能性を欠く非現実的な空論との評価が定着している。様々な課題を抱えた中で進む改革に高校と大学の現場からどのように取り組むべきなのか。高校、大学、そして大学入試にかかわる現場の識者の論考から、現在進行の問題を整理し対応の手がかりを提示する。
高等教育ライブラリ11
『責任ある研究のための発表倫理を考える』
盗用、不適切なオーサーシップ、二重投稿…。責任ある研究を遂行するためには、研究成果の発表も誠実に行う必要がある。本書は、研究倫理のなかでも「発表倫理」に着目したものである。第Ⅰ部では、当分野の第一人者である山崎茂明氏、生命科学分野の大隅典子氏、人文社会科学分野の羽田貴史氏が、発表倫理にまつわる制度化の課題やオーサーシップ、査読システム等の問題を議論する。第Ⅱ部では教育面に焦点を絞り、石井怜子氏、鎌田美千子氏、吉村富美子氏が、言語教育の専門家としての立場から盗用防止策を提案。
高等教育ライブラリ12
『大学入試における共通試験』
大学入試における新共通テストの実施は、高大接続改革にどのような影響をもたらすのか。既存の試験の検証を踏まえ、その役割を問う。
高等教育ライブラリ13
『数理科学教育の現代的展開』
あらゆる学問において活用され、複雑化した現代社会を生きる現代人の教養として不可欠である数理科学の素養を再評価する。
高等教育ライブラリ14
『個別大学の入試改革』
高大接続改革が進む中、個別大学には「大学入学共通テストの活用」と「多面的・総合的評価への転換」が突きつけられている。それらの問題点と解決の糸口を多様な視点から探る。
高等教育ライブラリ15
『大学入試における「主体性」の評価 その理念と現実』
大学入試における「主体性」および「主体性評価」とは何か。大学・高校の現場からの論考を交え、その理論を思考する。
高等教育ライブラリ16
『共生社会へ 大学における障害学生支援を考える』
2016年の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の施行後、障害のある学生に対しての現場対応は、どのように変化したのか。大学に求められる「合理的配慮」とは、どのようなものとなったのか。授業、学生生活、支援相談、教職員の意識と理解など、大学における様々な場面について、教員・研究者がそれぞれの領域から問題点を論じる全8章の論考集。これからの共生社会づくりへとつながる現状の課題と解決の手がかりを、現場発信の理念と具体的な事例から詳細に提示する、障害学生支援に携わる関係者必携の書。
高等教育ライブラリ17
『学士課程教育のカリキュラム研究』
学士課程教育という呼称には、かつて学部教育と呼ばれていた時代の反省が込められており、そのひとつは共通教育と専門教育の分断にあった、本書では両者一体のカリキュラムを念頭に、実態の一端を悉皆調査に基づくデータセットを使って明らかにする。具体的には、卒業要件単位数に占める必修単位数の比率およびその規定要因を、人文科学系、社会科学系、理学系、工学系、農学系、教育学系、教養系、音楽系、スポーツ系の9分野にわたり比較検討することで、従来は初・中等教育が中心であったカリキュラム研究の対象を、学士課程教育にまで拡張することの可能性を探る。